【 法師温泉 長寿館 】 群馬
群馬県と新潟県の境、JR上毛高原駅からバスを二つ乗り継いだ先に「法師温泉 長寿館」はあります。
山あいにひっそりとたつ一軒宿ながら、館内には三つの温泉があり、特に名高いのは「法師乃湯」。旧国鉄時代に「フルムーン」のCMで、上原謙さんと高峰三枝子さんが入浴した温泉です。広い湯舟は丸太で四つに仕切られ、これを枕にゆったりつかるのが伝統的な入浴法。別名「枕木の湯」とも呼ばれ、「これぞ温泉」という醍醐味が味わえます。
「法師乃湯」と本館・別館は、国の登録有形文化財。中でも「法師乃湯」と本館は、明治の香りを今に伝える貴重なものです。また、玄関脇の囲炉裏は、「山の宿の社交場」として知られ、鉄瓶の湯で茶菓のもてなしが受けられます。与謝野晶子、直木三十五など、文人墨客の投宿も多く、川端康成は、この囲炉裏端で「山祈る太古の民の寂心 今日新にす法師湯にして」の歌を詠みました。
本館・別館の他、二つの宿泊棟も全て純和風建築。山間の風景と見事に調和しています。地元産にこだわった料理にも定評があり、初夏には、敷地内を流れる法師川から河鹿蛙の鳴き声も聞こえます。文豪ならずとも、つい一首したためたくなる、そんな宿です。